公開質問状 回答 2022年9月1日(木)、AM 10:41受付
【玉城デニー】公開質問状 回答
質問1 社会福祉現場の人手不足への対応について
現在、地域社会においては、貧困やいじめ、障害や差別などによって、様々な生活困難を
かかえる人々が日々増加し、大きな社会問題となっていることは周知に事実です。そして同時に、それらの問題に対応し、福祉社会の充実に日夜尽力する福祉従事者が大事であることは、誰もが認めるところです。
しかし現実には、福祉事業に業務を希望する人材は年々減少し、県内の福祉系の専門学校
へ入学を希望する学生は年々減少し、希望を持って就職した若者の離職も著しく、福祉現場では慢性的な人手不足となっているのが現状です。特に、最も基本となる介護従事者、保育従事者の人手不足は誰もが認める社会現象となっています。
沖縄県政のトップである県知事に立候補されるお立場として、沖縄県内の社会福祉現場
における人手不足についてどのように考え、どのような取り組みをなされようとしておら
れるのか、以下の各問いに対する、可能な限り具体的な回答をお願いいたします。
【回答】
若者の社会福祉離れ、福祉従事者の離職の原因は、収入、職場の人間関係、将来の見通しなど様々な要因が複雑に絡み合い、その原因は多様だと考えます。
しかし、福祉従事者の確保は喫緊の課題であり、これまで、介護に関する入門的研修の実施により介護人材の新規参入のすそ野を拡大するとともに、介護職員の処遇改善や介護ロボット等の導入など労働環境の改善による介護職員の定着促進など、介護人材の確保の取り組みを総合的に展開してきました。
また、保育士の確保についても、県独自の施策として保育士の正規雇用化や年休取得、休憩取得及び産休取得の支援などの処遇改善に取り組んでいます。
福祉人材の処遇については、社会に求められる役割と責任の重さに見合ったものに改善していくことが重要と考えています。国の経済対策においては、介護職員や保育士等を対象に収入を3%程度引き上げるための措置が実施されていますが、これが確実に賃金に反映されるよう、国や市町村と連携して取り組んでいきます。
少子高齢化の更なる進展に加え、多様化する社会問題に対応するためにも、引き続き、福祉従事者の確保に向けては様々な取り組みを積極的に実施していく考えです。
質問2 在留外国人の人権保障について
近年、外国人技能実習生制度や難民申請の際の入管施設への長期収容によって死亡する
ケースが多発するなど、在留外国人保護が問題になっています。これらは、在留外国人への人権侵害と思われます。日本は、先進国の一員として国民の人権保障だけでなく、在留外国人の人権も等しく保障すべきではないでしょうか。候補者のお考えをお聞かせ下さい。
また、今年2月のロシアによるウクライナへの武力侵攻により、多くの民間人が殺傷され、また、多くの難民が近隣国に避難しました。日本も、来日したウクライナ人を避難民の枠のもと積極的に受け入れています。しかし、これを機会に、難民制度の改革が必要ではないでしょうか。何故なら、これまで、難民として認定される率が、他の欧米諸国に比べて極端に低いこと、難民申請者の生活保障が不十分であることなどが指摘されています。その対応策として、認定 NPO 法人難民支援協会は、次のような提言等を行っています。
『難民受け入れが進まない背景には、難民に限らず、移民の受け入れについて、これまで十分に議論がなされてこなかったこともあります。海外から「人」をどう受け入れ、共にどんな社会を作っていくのかという観点で移民政策を作ることは、難民を社会の一員と
してどう迎え入れるかという議論にもつながる重要な課題です。』
日本において難民問題は岐路に立っていると思われます。この問題に関して、候補者ご自身はどのような政策変更をお考えなのかお聞かせください。
【回答】
国は、外国人材が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するため、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」をとりまとめ、それに基づく具体的な取組が全国各地で進んでいます。この総合的対応策には、人権擁護の取り組みについても触れています。
今後、外国人材の受け入れは、労働者としてだけでなく、生活者としての外国人が定着していくということであり、地域社会に非常に大きなインパクトを与えることになります。そのことを考えると、総合的対応策のより一層の拡充、地方自治体の取組に対する十分な財政措置などが重要と考えます。
外国人材及び在留外国人への日本語教育、さらには安心して働き、暮らしていくための様々な支援など、多文化共生社会の実現に向け、国と連携し取り組んでまいります。
また、日本の難民認定者数は、諸外国と比べ極端に少なく、「難民鎖国」と批判されてきました。難民条約における「難民」の定義をあまりにも狭く解釈していること、難民認定行政と出入国管理行政が分離されていないことなどが背景にあると考えます。「難民」の定義を緩和するとともに、難民行政を入管行政から独立させることが必要と考えます。
質問3 虐待・孤立・認知症施策等の地域課題について
虐待は重大な権利侵害です。認知症や知的障がい等により自分の意思を伝えられない方もいます。病気や人との違いにより悩み、引きこもる方もいます。介護と育児等のダブルケアで生活に影響の出ている方もいます。
現在、人々の生活は多様化しており、福祉的支援も複雑化・複合化しています。令和3年4月から「重層的支援体制整備事業」が創設され、本年4月からは「第二期成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしております。これらは、地域の多様な主体が連携して地域の課題に取り組むという共通点があり、地域共生社会の実現を目指すものです。
沖縄県内のこれらの取り組みは進んでおりません。市町村を後押しするための方策につ
いて、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【回答】
国は、2021 年度より市町村において地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応するため、属性や世代・相談内容を問わない包括的な相談支援、社会とのつながりを作るための参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する重層的支援体制整備事業を創設しました。この取り組みを実効的なものにするため、各市町村の相談支援体制等の実態調査や、研修等を実施し、重層的支援体制を構築する市町村を支援していきたいと考えております。
なお、市町村を支援する具体的な取り組みとして、市町村職員向けの虐待防止に関する研修の実施や、地域包括支援センター等へ専門的な助言を行う認知症疾患医療センターを6か所指定し相談を受けるなどを行っています。また、「地域住民を見守り、支えるネットワーク形成促進事業」により、市町村の包括的な支援体制の構築に向けた後方支援を行っています。今後も、これらを継続し、市町村における地域課題解決のための支援を強化してまいります。
質問4 罪を犯した高齢者・障がい者・生活困窮者に対する福祉的支援について
平成 28 年 12 月に「再犯の防止等の推進に関する法律」(再犯防止推進法)が公布・施行されました。沖縄県においても再犯防止推進計画が策定され様々な取り組みが行われていることと思います。誰一人取り残すことのない「沖縄らしい優しい社会」の実現を目指し、罪を犯した方たちが立ち直り、再び地域社会の大切な一員として生きがいを持って生活するためには各関係機関等が互いに共通認識のもと適切な支援の強化が必要と思われます。
逮捕後の起訴猶予や裁判での執行猶予判決が出た方の支援等に関しても未だに末端まで支援が行き届いていないのが現状であり、そうした方々を支援する人材育成等も急務と感じております。また、犯罪に至るまでの経緯としましても「生育環境からの影響が大きい」という課題も存在していると感じます。
このような状況にどう対応をすべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【回答】
犯罪や非行を起こした人には、障害や貧困、依存症などを抱え社会的な支援が必要であるにもかかわらず、適切な支援に繋がらないまま再犯を繰り返している人が少なくありません。
そのため、民間においては、保護司、自助グループ、依存症リハビリ施設等の各団体が支援を行っています。
支援がなく再犯を繰り返すといった「負の連鎖」を断ち切るには、刑事司法関係機関だけでなく、地方公共団体、民間による連携が必要であり、これら各関係機関と連携の強化を図ることにより、再犯防止に向けて取り組んでいきたいと考えています。
具体的な取り組み例として、高齢者や障がいにより福祉的な支援を必要とする矯正施設退所者等に対し、関係機関等と連携・協働しつつ、矯正施設入所中から退所後まで一貫した相談支援を実施するなどにより社会復帰及び地域生活への定着を支援します。
質問5 沖縄県の貧困対策・低所得者対策について
沖縄県は、子どもに限定しない県民全体の貧困率においても全国平均の約2倍となり、県民の年間所得・平均賃金などが、全国 47 都道府県中最下位又はそれに近い状況にあり、生活保護率も依然高い比率を示しており、このような家計の苦しさが、様々な生活困難や社会問題の大きな原因になっていると言えます。
また、今回の新型コロナウイルスの世界的パンデミックは、すべての人の日常生活に影響を与え、コミュニケーションのあり方や人間関係、働き方など多くの面において、これまでとは大きく異なる社会の到来が予想されています。そのような影響は、特に貧困層、障害のある方々の生活様式や支援のあり方にも大きな影響を与え、様々な生活格差の拡大や不利益の拡大が懸念されています。
このような沖縄県の貧困対策、低所得対策、特にコロナ禍に関連する家計への支援は喫緊の課題であると言えますが、候補者は当選後、このような沖縄の貧困及びそれから派生する諸課題について、どのような政策提言をされ、どのような取り組みを予定されているのか、具体的に聞かせ下さい。
【回答】
沖縄県の子どもの貧困問題は全国と比べて著しく厳しい状況にあり、状況の改善と抜本的解決による子どもを貧困から守る子育てしやすい暮らしが求められます。貧困の連鎖等を断ち切るため、親の妊娠・出産期から子どもの社会的自立に至るライフステージに応じた切れ目のない支援体制等の仕組みづくり、保護者の所得向上と働きやすい環境の整備、公平な教育機会の確保など社会政策、経済政策及び教育政策が一体となった総合的な取組の拡充ときめ細かな対応を推進します。
また、新型コロナウイルス感染症の影響等により増加する生活困窮者に対する切れ目のない支援として、住居確保給付金の特例給付や緊急小口資金等の特例貸付、新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金の再支給などを実施しています。引き続き自立相談支援機関等の体制を強化し、関係機関と連携しながら、生活困窮者等、支援を必要とする方々への就労や家計等に対する包括的な支援に取り組みます。
質問6 ヤングケアラーの状況把握と支援体制の整備について
近年、通学や仕事のかたわら、障害や病気のある家族のため介護や世話などの役割を担う18 歳未満の子供、いわゆるヤングケアラーについて社会的関心が高まっております。
2018 年の厚生労働省と文部科学省が行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報
告書」によると、家庭内で世話をしている家族がいる中学生は、約 17 人に 1 人(5.7%)という結果が出ました。また 2021 年の糸満市調査では、7 人に 1 人(13.7%)とあり、全国と比較すると高い数字がでています。障害や病気の世話は長期間に渡ることもあり、学業の遅れや進学・就職を諦めるなど重大な問題であります。更にヤングケアラーの発見は難しいとされていることから学校や関係機関、地域社会が早期に発見し対応する必要性が指摘されています。ご承知の通り、沖縄県は他都道府県に比べると児童虐待やDV、貧困問題などかなり深刻な状況があり、実態調査が急がれます。
今後、ヤングケアラーの早期発見方法も含め、ヤングケアラーやその家族を含めた支援に関する制度、政策をどのようのお考えなのかお聞かせください。
【回答】
ヤングケアラーへの支援については、まず、子どもの権利尊重条例の「すべての子供はその尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」との規定に基づき、今年度、児童・生徒を対象とした実態調査を行うこととしています。
また、福祉、介護、医療、教育等の職員を対象とした研修を実施し、普及啓発の取り組みなどにより、ヤングケアラーの認知・理解促進を図ることにしています。
加えて、ヤングケアラーなど困難を抱える家庭を訪問し、家庭状況等を把握するなど必要な支援につなぐための取り組みの他、ひとり親家庭や低所得の子育て家庭へのヘルパー派遣を行うなどヤングケアラーへの支援を行うこととしています。
その他、ヤングケアラーに関する独自条例制定の可能性について調査研究を行います。
これらの取り組みを進め、ヤングケアラー及びその家族への支援体制を強化していきます。
質問7 身元保証がない方に対する支援について
医療現場において、身寄りがいないために、身元保証を付ける事ができない入院患者の転院や施設入所が制約され、患者の権利が侵害されている現状があります。転院先や施設入所先が保証人を求める理由は多岐にわたっているのが実情で、保証人代行を有償で行う民間団体が増えてきていますが、様々な問題点を抱えていることも指摘されています。加えて、経済的な事情で、身元保証代行団体に支払う契約金等が捻出できず、施設等の利用ができない方もいます。高齢化し、家族機能や身寄りがなく、かつ判断力の低下した高齢者が増加しつつある状況があります。このような方々が、安心して医療や介護を受けられるようにするための対応は、喫緊に取り組むべき課題と考えます。
本年4月から「第二期成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしておりますが、市町村によってその取り組みには差があります。このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【回答】
県内市町村では、成年後見制度利用促進計画の策定や中核機関の設置が進んでいないことから、関係部局と連携し、関係機関による広域連携会議や関係職員向けの研修、市町村職員向け相談窓口の設置等をとおし、市町村の体制づくりを促進します。
また、併せて「成年後見制度利用支援事業」や「成年後見制度法人後見支援事業」の活用を促し、成年後見制度の利用促進、市民後見の活用も含めた法人後見の実施に向けた取組を支援していく考えです。
質問8 ハンセン病回復者への医療・介護支援について
ハンセン病患者はこれまで、国による絶対隔離政策などにより、療養所に隔離され厳しい差別を受けてきました。また、入所せずに地域で暮らしてきた回復者や家族達もまた偏見差別にさらされてきました。沖縄県は、全国でも最も多いハンセン病回復者(退所者・入所歴のない人達)が地域で生活しています。しかしながら、そのほとんどの方々は、ハンセン病への差別や偏見を怖れ、そのことを隠し続けて生活しているのが現状です。そのため、地域の医療機関で受診することを躊躇し、後遺症を悪化させる事例も少なくありません。
療養所を退所した人達の高齢化が進み、抱える問題も深刻さを増してきています。
ハンセン病回復者で暮らし続ける当事者や家族が、あたりまえに暮らせる社会づくり、あらゆる偏見や差別を無くすため、県知事としてどのような対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【回答】
ハンセン病問題については、過去の誤った隔離政策が偏見差別を生み、現在も心を痛め苦しんでいる関係者が多くいることを重く受け止めております。誰一人取り残さない社会を目指し、偏見差別の解消のための啓発活動や、ハンセン病回復者への支援に取り組んでおります。
また、ハンセン病回復者が抱える様々な課題の解決に取り組む協議会を年度内に設置すべく、関係者の方々との意見交換を重ねております。この協議会の活用も含め、高齢化に伴う回復者の方々の医療、介護、福祉の課題の解決を図っていきたいと考えています。
質問9 介護認定の円滑化について
沖縄県は全国でも高い伸び率で高齢者人口が増加する見込みです。今後急速に医療及び介護を必要とするニーズの増加が予想されます。近年、救急病院において急性期を脱した患者が、重症の後遺症などにより在宅復帰が容易でないために救急医療用の病床を長期間使用することで、新たな救急患者を受けることが困難になる、いわゆる出口問題が生じています。その要因の一つに要介護認定申請から認定までに時間がかかり、スムーズな施設間連携、在宅復帰が進まないことがあります。
要介護認定申請から認定まで平均期間が 38.5 日(平成 30 年度)日と全国的に依然と長
くなっており入院期間を延ばす要因となっています。要介護認定制度に関する認定業務の簡素化は重要で速やかに実施すべきだと考えます。
このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【回答】
介護給付の適正化を図るため、市町村等においては介護保険の保険者として、国が示す主要5事業「要介護認定の適正化」、「ケアプランの点検」、「住宅改修等の点検」、「縦覧点検・医療情報との突合」、「介護給付通知」を柱とした取組の実施が求められています。
介護給付を必要とする受給者を適切に認定するため、認定調査員、介護特定審査会委員及び主治医等に対して、全国一律の基準に基づき公正かつ的確に認定を実施できるよう、知識・技術の習得を図るための研修会を実施しているところであり、認定業務の簡素化については、現場の意見も踏まえながら研究していきたいと考えています。