沖縄県ソーシャルワーカー協議会 公開質問状
2024年10月18日
沖縄1区 赤嶺政賢
【質問1】虐待・孤立・認知症施策等の地域課題について
日本の福祉制度は、子どもや障がい者、高齢者といった対象者やリスクごとに制度設計が行われ、認知症や引きこもりなど様々な困難を抱えた人々が制度のはざまで十分な支援を受けられず、社会的に孤立するケースが増加しています。
政府はこうした課題に対応することを目的として、重層的支援体制整備事業を立ち上げましたが、伴走支援や地域づくりなど既存の事業を一体的に実施するもので、各事業の従来の補助率を前提としています。
市町村が同整備事業を積極的に推進していくためには財政的な裏付けが必要であり、国の財政支援を拡充すべきです。
【質問2】罪を犯した高齢者・障がい者・生活困窮者に対する福祉的支援について
犯罪に至る背景には生育環境の影響が大きく、子どもたちが安心して成長できる環境を整えていくことが重要です。最低賃金の引上げや正規雇用の拡大、労働時間短縮など親の就労条件の改善、小中学校の学校給食費無償化や高等教育の学費無償化など教育費負担の軽減、少人数学校の推進や教員不足の解消、競争教育の改善など、総合的な対策が必要です。
また、罪を犯してしまった人の刑事施設での拘置は、本人の更生を中心に据え、円滑な社会復帰と再犯防止につなげていくことが大切です。刑法改正で拘禁刑が導入され、刑務作業は義務ではなくなったとされていますが、刑事施設の長の判断で行わせることになるため、受刑者本人の意思に反して強制される危険があります。更生と円滑な社会復帰につなげていくためには、受刑者の自発性・自立性を尊重して働きかけていく必要があると考えます。
【質問3】ヤングケアラーの状況把握と支援体制の整備について
若い世代が家族や近親者の世話、介護に追われ、重い負担に苦しみ、成長や進路の妨げにもなっています。こうしたヤングケアラーはそれぞれの困難な事情を抱えており、丁寧に相談に乗るための体制が必要です。地方自治体への相談窓口の設置やスクールソーシャルワーカーの配置などを進め、実情や悩みに応じてサポートする仕組みをつくります。ヤングケアラーを支援する法律や制度の整備、ケアを受ける人もケアをする人も安心して利用できる介護・福祉制度への改善を進めます。
離婚後の子の養育費問題の解決は、ひとり親家庭の子のくらしを改善するうえでも重要です。日本では、養育費の取り決めをしている母子世帯は約46%、取り決めどおりに支払われているのは28%にすぎません。スウェーデンやドイツ、フランスなどで行われているように、国による養育費の立替え払い制度、養育費取り立て援助制度などを整備します。
【質問4】身元保証がない方に対する支援について
医療現場で、身寄りがいないために転院や施設入所が制約される現状は改めなければなりません。日本社会の高齢化がすすみ、単身の高齢者や高齢者のみの世帯が増加する下で、認知症などにより判断力の低下した方々をどう支えていくかが問われています。誰もが安心して医療や介護を受けられるようにするために成年後見制度が果たす役割は重要です。
社会保障の基盤整備は国が責任をもってすすめるべきもので、どこに住んでいても必要な支援を受けられるようにすべきです。市町村の取り組みを国がしっかりと財政的に支えていくことが重要です。
【質問5】ハンセン病回復者への医療・介護支援について
ハンセン病回復者の人たちが地域で安心して暮らすためには、ハンセン病や歴史的背景についての正しい理解や差別を許さないという認識を広く社会に行き渡らせることが必要です。ハンセン病の元患者や家族に対する偏見・差別の解消と名誉回復、ハンセン病問題を正しく理解するための学校教育の充実、啓発事業の推進に取り組みます。
地域で適切な医療、就労支援や介護保険、障がいの認定などさまざまなサポートを受けられるよう対策を拡充します。
【質問6】介護認定の円滑化について
救急病院において急性期を脱した患者が在宅復帰できず、新たな患者の受け入れが困難になる、いわゆる出口問題は、高齢者人口の増加に伴って一層深刻になることが予想されます。現場の声をふまえて、要介護認定業務の簡素化を進めることは必要なことだと考えます。
また、コンピューター判定を主軸に保険で受けられる介護の内容と限度額を機械的に決める現在の制度そのものを見直して、専門家の判断で必要な介護を適正に提供する仕組みをめざす動きもあります。こうした制度の根本的な改革を検討していくことも必要だと考えます。
【質問7】沖縄県の在留外国人への対応
厚生労働省によると、日本国内で外国人労働者を雇用している事業所数は、2023年10月末時点で31万8,775所、外国人労働者数は204万8,675人に上り、過去最高を更新しています。外国人労働者は、地域経済社会を支える重要な役割を果たしています。
ところが、外国人労働者の中には、パスポートや預金通帳をとりあげられ、最低賃金を割り込む低賃金で働かされるなど、さまざまな人権侵害に苦しんでいる人たちがいます。
外国人労働者が、憲法と労働基準法で認められた労働者としての権利が保障され、人間らしく働けるように労働条件を改善します。生活全般に係る相談を一元的に受け入れるワンストップセンターの整備を推進します。夜間中学などを含め外国人労働者・家族の日本語教育の充実や外国人児童の学校教育、外国人学校の支援に取り組みます。
2023年の通常国会で成立した改定入管法は、難民認定申請中は送還が停止される規定に例外を設け、申請中の送還を可能にするものです。迫害を受ける恐れがある国への追放・送還は、難民条約のノン・ルフールマン原則に反します。外国人労働者に対する人権侵害をやめさせ、人間らしく生きられるように入管法の抜本的改正を求めます。