令和6年 衆議院選挙立候補者への公開質問状
【質問1】 虐待・孤立・認知症施策等の地域課題について
虐待は重大な権利侵害です。認知症や知的障がい等により自分の意思を伝えられない方もいます。病気や人との違いにより悩み、引きこもる方もいます。介護と育児等のダブルケアで生活に影響の出ている方もいます。
現在、人々の生活は多様化しており、福祉的支援も複雑化・複合化しています。2021年度に「重層的支援体制整備事業」が創設され、2017年度から取り組まれている「成年後見制度利用促進基本計画」は8年目に入っております。これらは、地域の多様な主体が連携して地域の課題に取り組むという共通点があり、地域共生社会の実現を目指すものです。
沖縄県内のこれらの取り組みも徐々に進んできてはいますが、全国と比較すると大幅に遅れております。
市町村を後押しするための方策について、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【質問2】 罪を犯した高齢者・障がい者・生活困窮者に対する福祉的支援について
現在の司法福祉領域を取り巻く環境は2021年度から地域生活定着支援センターによる「被疑者等支援業務」が開始され、地方公共団体との連携など地域で新たな展開も始まっています。また、「懲役刑」と「禁固刑」の両刑を一元化し「拘禁刑」を創設する等の改正刑法が成立し2025年4月から施行されます。社会復帰の観点から、高齢者、障がい者等の特性に合わせた作業や改善指導を組み合わせた処遇を行うとしたものです。
こうした流れを受け、罪を犯した高齢者、障がい者等が社会復帰した際にも切れ目のない支援や特性に応じた環境整備となり、再犯防止の観点からも非常に重要と考えます。
沖縄県においても再犯防止推進計画が策定され様々な取り組みが行われていることと思います。誰一人取り残すことのない「沖縄らしい優しい社会」の実現を目指し、罪を犯した方たちが立ち直り、再び地域社会の大切な一員として生きがいを持って生活するためには各関係機関等が互いに共通認識のもと適切な支援の強化が必要と思われます。
犯罪に至るまでの経緯としましても「生育環境からの影響が大きい」という課題も存在していると感じます。
このような状況にどう対応をすべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【質問3】 ヤングケアラーの状況把握と支援体制の整備について
近年、通学や仕事のかたわら、障害や病気のある家族のための介護や世話などの役割を担う18歳未満の子供、いわゆるヤングケアラーについて社会的関心が高まっております。2023年3月の「沖縄県ヤングケアラー実態調査」によると、「ヤングケアラーと思われる子ども」は小学5年生~高校3年生の児童生徒全体の5.5%(約7,450人)、その中でも家族の世話により日常生活に影響がでている「何らかの影響が出ていて、支援が急がれる子ども」は1.8%(約2,450人)と推定されています。 障害や病気の世話は長期間に渡ることもあり、学業の遅れ、子ども同士や社会との交流、進学・就職といった将来の進路選択など、社会生活において重大な支障をきたすことが想定されます。また、当事者と周囲の認識の違いに対しても配慮を要することから実態の把握が困難であり、慎重な対応が求められます。
このことから、学校や関係機関、地域社会が早期に発見することはもちろん、当事者の気持ちに寄り添い丁寧に対応する必要性が指摘されています。ご承知の通り、沖縄県は他都道府県に比べると児童虐待やDV、貧困問題などかなり深刻な状況にあり、背景として併せて考慮することも必要です。
今後、ヤングケアラーの早期発見方法も含め、ヤングケアラーやその家族を含めた支援に関する制度、政策をどのようにお考えなのかお聞かせ下さい。
【質問4】 身元保証がない方に対する支援について
医療現場において、身寄りがいないために、身元保証を付ける事ができない入院患者の転院や施設入所が制約され、患者の権利が侵害されている現状があります。転院先や施設入所先が保証人を求める理由は多岐にわたっているのが実情で、保証人代行を有償で行う民間団体が増えてきていますが、様々な問題点を抱えていることも指摘されています。加えて、経済的な事情で、身元保証代行団体に支払う契約金等が捻出できず、施設等の利用ができない方もいます。高齢化し、家族機能や身寄りがなく、かつ判断力の低下した高齢者が増加しつつある状況があります。このような方々が、安心して医療や介護を受けられるようにするための対応は、喫緊に取り組むべき課題と考えます。
令和4年4月から「第二期成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしておりますが、市町村によってその取り組みには差があります。
このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【質問5】 ハンセン病回復者への医療・介護支援について
ハンセン病発病者はこれまで、国による絶対隔離政策などにより、療養所に隔離され厳しい差別を受けてきました。また、入所せずに地域で暮らしてきた回復者や発病者の家族達も、偏見差別が強く存在する社会で息をひそめて暮らしてきました。沖縄県は、全国で最も多いハンセン病回復者とその家族が地域で暮らす県です。しかしながら、多くの回復者や家族は差別偏見を恐れ、自身の過去の病歴や身内に回復者がいることを隠し続けて生活しているのが現状です。そのため、地域の医療機関で受診することを躊躇し、後遺症を悪化させる事例も少なくありません。療養所退所者の高齢化が進み、抱える問題も深刻さを増してきています。
コロナ過は、感染症をめぐる差別偏見の問題が遠い世界や過去のことではないことを示しました。療養所では資料館が設置され、講座や企画展など歴史や体験を伝える様々な取組みが行われています。
ハンセン病回復者や家族が、あたりまえに暮らせる社会づくりに向け、どのような対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
【質問6】 介護認定の円滑化について
沖縄県は全国でも高い伸び率で高齢者人口が増加する見込みです。今後急速に医療及び介護を必要とするニーズの増加が予想されます。近年、救急病院において急性期を脱した患者が、重症の後遺症などにより在宅復帰が容易でないために救急医療用の病床を長期間使用することで、新たな救急患者を受けることが困難になる、いわゆる出口問題が生じています。その要因の一つに要介護認定申請から認定までに時間がかかり、スムーズな施設間連携、在宅復帰が進まないことがあります。
※令和4年度下半期においても、要介護認定までの平均期間は40.2日と全国的に依然と長くなっており入院期間を延ばす要因となっています。要介護認定制度に関する認定業務の簡素化は重要で速やかに実施すべきだと考えます。
このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。(※厚生労働省老健局説明資料:規制課企画推進会議健康・医療・介護ワーキンググループ要介護認定の迅速化・正確性確保について)
【質問7】 沖縄県の在留外国人への対応
りゅうぎん総合研究所の報告書によると、「出入国在留管理庁の在留外国人統計によると、2022年12月末の沖縄県の在留外国人は2万1,792人で、新型コロナウイルス対策で実施した外国人の入国制限を撤廃したことから前年末比 3,257 人(17.6%増)増加した。」と述べている。県内の経済活動が活発化するに連れて人材不足が課題となるが、アルバイトも含め外国人労働者が地域経済社会を下支えしている現状がある。また、県内の生産年齢人口も今後減少することが予測されており、長期的な労働力を確保するためにも外国人人材の必要性が更に高まるだろう。しかし生活面や教育面など、彼らを取り巻く環境は未だ改善の余地があると続けている。日本における外国籍の人々への差別的な対応について、我々の属する日本ソーシャルワーカー連盟は、出入国管理及び難民認定法の改正に対する声明を出している。https://jfsw.org/2023/08/07/3181/
現在、福祉人材を含め、労働力不足が県内でも顕著になりつつあるが、外国人の労働力だけでなく、彼らの文化や人権を守る多文化共生の島を作るために、候補者はどのような政策を実施することを目指すのかお聞かせください。
令和6年10月15日 沖縄県ソーシャルワーカー協議会