令和4年 第26回参議院議員通常選挙立候補者に対する公開質問状
以下の9つの福祉課題について、立候補者全員に対し、公開でご質問申し上げます。
ご多忙とは存じますが、所定の方法でご回答いただきますようお願い申し上げます。
質問1:福祉現場の人手不足の解消について
現在、地域社会においては、貧困やいじめ、障害や差別などによって、様々な生活困難をかかえる人々が日々増加し、大きな社会問題となっていることは周知に事実です。そして同時に、それらの問題に対応し、福祉社会の充実に日夜尽力する福祉従事者が大事であることは、誰もが認めるところです。
しかし現実には、福祉事業に業務を希望する人材は年々減少し、福祉系の専門学校や大学は定員割れとなり、希望を持って就職した若者の離職も著しく、福祉現場では慢性的な人手不足となっているのが現状です。特に、最も基本となる介護従事者、保育従事者の人手不足は誰もが認める社会現象となっています。
候補者ご自身は、このような福祉現場の人手不足についてどのように考え、どのような取り組みをなされるのか、以下のとおりお伺い致します。
質問2:在留外国人の人権保障について
近年、外国人技能実習生制度や難民申請の際の入管施設への長期収容によって死亡するケースが多発するなど、在留外国人保護が問題になっています。これらは、在留外国人への人権侵害と思われます。日本は、先進国の一員として国民の人権保障だけでなく、在留外国人の人権も等しく保障すべきではないでしょうか。候補者のお考えをお聞かせ下さい。
また、今年2月のロシアによるウクライナへの武力侵攻により、多くの民間人が殺傷され、また、多くの難民が近隣国に避難しました。日本も、来日したウクライナ人を避難民の枠のもと積極的に受け入れています。しかし、これを機会に、難民制度の改革が必要ではないでしょうか。何故なら、これまで、難民として認定される率が、他の欧米諸国に比べて極端に低いこと、難民申請者の生活保障が不十分であることなどが指摘されています。その対応策として、認定NPO法人難民支援協会は、次のような提言等を行なっています。
『難民受け入れが進まない背景には、難民に限らず、移民の受け入れについて、これまで十分に議論がなされてこなかったこともあります。海外から「人」をどう受け入れ、共にどんな社会を作っていくのかという観点で移民政策を作ることは、難民を社会の一員としてどう迎え入れるかという議論にもつながる重要な課題です。』日本において難民問題は岐路に立っていると思われます。この問題に関して、候補者ご自身は、どのような政策変更をお考えなのかお聞かせください。
質問3:虐待・孤立・認知症施策等の地域課題について
虐待は重大な権利侵害です。認知症や知的障がい等により自分の意思を伝えられない方もいます。病気や人との違いにより悩み、引きこもる方もいます。介護と育児等のダブルケアで生活に影響の出ている方もいます。
現在、人々の生活は多様化しており、福祉的支援も複雑化・複合化しています。令和3年4月から「重層的支援体制整備事業」が創設され、本年4月からは「第二期成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしております。これらは、地域の多様な主体が連携して地域の課題に取り組むという共通点があり、地域共生社会の実現を目指すものです。
沖縄県内のこれらの取り組みは進んでおりません。市町村を後押しするための方策について、候補者自身のお考えをお聞かせください。
質問4:罪を犯した高齢者・障がい者・生活困窮者に対する福祉的支援について
平成28年12月に「再犯の防止等の推進に関する法律」(再犯防止推進法)が公布・施行されました。沖縄県においても再犯防止推進計画が策定され様々な取り組みが行われていることと思います。誰一人取り残すことのない「沖縄らしい優しい社会」の実現を目指し、罪を犯した方たちが立ち直り、再び地域社会の大切な一員として生きがいを持って生活するためには各関係機関等が互いに共通認識のもと適切な支援の強化が必要と思われます。
逮捕後の起訴猶予や裁判での執行猶予判決が出た方の支援等に関しても未だに末端まで支援が行き届いていないのが現状であり、そうした方々を支援する人材育成等も急務と感じております。また、犯罪に至るまでの経緯としましても「生育環境からの影響が大きい」という課題も存在していると感じます。
このような状況にどう対応をすべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
質問5:沖縄県の貧困対策・低所得者対策について
沖縄県は、子どもに限定しない県民全体の貧困率においても全国平均の約2倍となり、県民の年間所得・平均賃金などが、全国47都道府県中最下位又はそれに近い状況にあり、生活保護率も依然高い比率を示しており、このような家計の苦しさが、様々な生活困難や社会問題の大きな原因になっていると言えます。
また、今回の新型コロナウイルスの世界的パンデミックは、すべての人の日常生活に影響を与え、コミュニケーションのあり方や人間関係、働き方など多くの面において、これまでとは大きく異なる社会の到来が予想されています。そのような影響は、特に貧困層、障害のある方々の生活様式や支援のあり方にも大きな影響を与え、様々な生活格差の拡大や不利益の拡大が懸念されています。
このような沖縄県の貧困対策、低所得対策、特にコロナ禍に関連する家計への支援は喫緊の課題であると言えますが、候補者は当選後、このような沖縄の貧困及びそれから派生する諸課題について、どのような政策提言をされ、どのような取り組みを予定されているのか、具体的にお聞かせ下さい。
質問6:ヤングケアラーの状況把握と支援体制の整備について
近年、通学や仕事のかたわら、障害や病気のある家族のため介護や世話などの役割を担う18歳未満の子供、いわゆるヤングケアラーについて社会的関心が高まっております。
2018年の厚生労働省と文部科学省が行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」によると、家庭内で世話をしている家族がいる中学生は、約17人に1人(5.7%)という結果が出ています。また2021年の糸満市調査では、7人に1人(13.7%)とあり、全国と比較すると高い数字がでています。障害や病気の世話は長期間の渡ることもあり、学業の遅れや進学・就職を諦めるなどの重大な問題を生み出す反面、ヤングケアラーの発見は難しいとされていることから学校や関係機関、地域社会が早期に発見し対応する必要性が指摘されています。ご承知の通り、沖縄県は他都道府県に比べると児童虐待やDV、貧困問題などかなり深刻な状況があり、実態調査や適切な対応が急がれています。
今後、ヤングケアラーの早期発見方法も含め、ヤングケアラーやその家族を含めた支援に関する制度、政策をどのようにお考えなのかお聞かせ下さい。
質問7:身元保証がない方に対する支援について
医療現場において、身寄りがいないために、身元保証を付ける事ができない入院患者の転院や施設入所が制約され、患者の権利が侵害されている現状があります。転院先や施設入所先が保証人を求める理由は多岐にわたっているのが実情で、保証人代行を有償で行う民間団体が増えてきていますが、様々な問題点を抱えていることも指摘されています。加えて、経済的な事情で、身元保証代行団体に支払う契約金等が捻出できず、施設等の利用ができない方もいます。高齢化し、家族機能や身寄りがなく、かつ判断力の低下した高齢者が増加しつつある状況があります。このような方々が、安心して医療や介護を受けられるようにするための対応は、喫緊に取り組むべき課題と考えます。
本年4月から「第二期成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしておりますが、市町村によってその取り組みには差があります。このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
質問8:ハンセン病回復者への医療・介護支援について
ハンセン病患者はこれまで、国による絶対隔離政策などにより、療養所に隔離され厳しい差別を受けてきました。また、入所せずに地域で暮らしてきた回復者や家族達もまた偏見差別にさらされてきました。沖縄県は、全国でも最も多いハンセン病回復者(退所者・入所歴のない人達)が地域で生活しています。しかしながら、そのほとんどの方々は、ハンセン病への差別や偏見を怖れ、そのことを隠し続けて生活しているのが現状です。そのため、地域の医療機関で受診することを躊躇し、後遺症を悪化させる事例も少なくありません。
療養所を退所した人達の高齢化が進み、抱える問題も深刻さを増してきています。ハンセン病回復者で暮らし続ける当事者や家族が、あたりまえに暮らせる社会づくり、あらゆる偏見や差別を無くすため、国会議員としてどのような対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
質問9:介護認定の円滑化について
沖縄県は全国でも高い伸び率で高齢者人口が増加する見込みです。今後急速に医療及び介護を必要とするニーズの増加が予想されます。近年、救急病院において急性期を脱した患者が、重症の後遺症などにより在宅復帰が容易でないために救急医療用の病床を長期間使用することで、新たな救急患者を受けることが困難になる、いわゆる出口問題が生じています。その要因の一つに要介護認定申請から認定までに時間がかかり、スムーズな施設間連携、在宅復帰が進まないことがあります。
要介護認定申請から認定まで平均期間が38.5日(平成30年度)日と全国的に依然と長くなっており入院期間を延ばす要因となっています。要介護認定制度に関する認定業務の簡素化は重要で速やかに実施すべきだと考えます。
このような状況にどう対応をするべきか、候補者自身のお考えをお聞かせください。
以上
2022年6月17日
沖縄県ソーシャルワーカー協議会